2011年5月3日火曜日

余震に備え、知を守る ―地道なひもかけ作業、黙々と―

5月2日(月)、東北大学附属図書館2号館ではこれまでに引き続き復旧作業が行われ、午前と午後の部それぞれ20名のHARUのスタッフが作業にあたりました。東北大学附属図書館の2号館は、平成2年の開館以降、国内外の新聞や学術雑誌を所蔵する、東北の知の拠点として機能してきました。当館の所蔵する雑誌は数十万冊に及び、東北大学の学生と教職員を中心に利用されるほか、全国の大学図書館への貸し出し等も行っています。


今年3月11日に発生した東日本大震災とその後の余震により、2号館の2階から4階では、書架に並んでいた書籍の6割以上が床に落下しました。一部の書籍は書架の脚の下敷きになるなどして破損し、書架自体も地震の衝撃で傾き、使えなくなってしまったものもあります。しかし、これまでの図書館本館の職員総勢約60人による懸命の復旧作業と、HARUのボランティアスタッフの活動により、2号館の書籍のほとんどが元の姿と同じように書架に整然と収められました。


この日の作業は、書架に収めた書籍を書架にひもでくくりつける作業です。今後も引き続き余震の恐れがあることから、書架の下から3段目から最上段までの書籍全てを、ビニールのひもで一段ごとに棚にくくりつけ、固定させる。図書館職員らが様々なひもの結び方を試し検討した結果、しっかりと棚に固定され、かつ効率的にこなせる結び方が考案され、学生たちもその結び方に倣って作業を進めました。


一方、今日は破損した本の箱詰め作業も行われました。表紙と中身とが分離してしまった本や、ページが破れてしまったものなどがあり、比較的容易に補修できる状態のものであれば職員の手によって行い、破損状態が深刻な書籍については専門業者に補修を委託する方針です。破損した本の中には、1800年代後半に国内外で出版された貴重な書籍などもあり、職員らは、できる限り多くの本をいち早く元の状態に戻したい、と意気込んでいます。


 今日の作業に参加した法学部三年生の男子学生は、図書館復旧活動に参加するのはこれで5回目。「いつも図書館を利用しているので、親切にしてくださる図書館の職員の方々に恩返ししたい」と話していました。文学部三年生の女子学生は、「部活の新歓の時期と重なり、なかなかボランティア活動をする時間が取れなかったが、やっと今日活動に参加することができた。自分がどの程度力になれるかわからないが、とりあえず今できることをやろう、と思いこの作業を行っている」と語りました。作業は、50分間行った後に10分程度の休憩をとる、という形で進められました。休憩の時間が訪れるたびに、職員が「休憩の時間です。休んでください!」と学生たちに拡声器で呼び掛けますが、休憩時間も惜しみ黙々と作業を続ける学生の姿もられました。
ひもで本をくくることによって、今後本を棚から取り出しにくくなるのではないか、という懸念の声もあります。図書館側は「今回のひもくくりは、余震に備えた応急的なものなので、多少不便になるのはやむを得ない。余震の心配がなくなり、書架の製造メーカーに安全点検を行ってもらった上で、問題ないと判断されれば、ひもをはずしたい」としています。本館1号館では、一部のエリアを除く大部分が先月25日から復旧しており、資料の貸し出しや返却も可能となっていますが、2号館の開館は今のところ未定です。今後は、1号館の書庫内で床に散乱した書籍の片付け作業に取り掛かる予定で、全館復旧に向けて、職員と学生による全力での作業が続く見込みです。


(広報部 目黒志帆美)

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東北大学地域復興プロジェクト"HARU"は、
東日本大震災からの復興支援・地域再生を目的として結成されたボランティア団体です。
現在は主に、仮設住宅での
支援活動をおこなっています。
東北大学の公認をいただいており、今後も地域に寄り添った活動を続けていく予定です。